新築に寄せて
良い家を建てるためにはまず住環境の良い土地が必要です。
私は30カ所もの土地を見て回って紫原6丁目のこの土地を選びました。しかし三月に見つけたその土地は条件付きでした。
それによると土地を買う時に家を建てる約束をしなければならないので、家の図面が完成するまでは土地の売買契約をするわけにはきませんでした。
ただ、レジデンスの標準仕様表を見ると大手ハウジングメーカーのものよりも格安であり、これなら私の支払い能力の範囲で建てられると踏んでいました。
そこで足繁くレジデンスの事務所に通って何度も土地の売買交渉と図面作成の打ち合わせを重ねます。しかし家の図面などそう簡単にできるものじゃない。
五月になると高橋社長から土地売買締結を催促されたが、私としては図面の目途が立つまでは応じるわけにいきませんでした。しかし実は私の方でも図面作成を急いでいたのです。
と言うのは年内に家を完成させねばならなかったので、遅くとも七月までに建物請負契約に漕ぎつける必要があったのです。
家を建てるときに工務店任せにすれば施主は何もせずに気楽に過ごせるでしょう。
しかしそれでは建て売り住宅を買うのと大して変わりがありません。
私は自分の必要と好みを満たす家を建てようと、積極的に取り組みました。部屋割り、窓配置、屋根瓦、床材、外壁、玄関構え、外構、防音に至るまでよく調べてから打ち合わせに臨みます。
一例を示すと、採光と外観を勘案して窓の配置はこうしたいと絵に描いて伝えたところ、高橋社長は長期優良とするにはこの場所に支柱が必要なのでそうはできないと言う。そう言われると確かに外観より強度を優先せねばならない。
何度も修正して結局縦長な窓の採用が決まりました。
上に述べた8項目のほかにバルコニー、門構え等でも似たような応酬に近いやり取りを行っています。
そんなことを続けたので気の休まる日とてありません。
私の相手をせねばならない高橋社長と鶴田工務長の方も大変だったに違いありません。
互いに鍛えられながら打ち合わせを重ねて遂に図面確定に漕ぎつけました。
図面の書き換えは実に15回、第16プランにまで及びます。
また打ち合わせを何度も重ねたことが功を奏してこの頃には互いに相手の気心がわかるようになっていました。
早速サイディング(外壁の化粧板)を見に与次郎にあるニチハ(株)のショールームまで出かけます。
そこには美麗なサイディングが多数展示してあって目を奪われます。
3、4回通って耐候性と色柄を勘案しつつ外壁用と玄関構え用のサイディングを選びました。
印刷してもらったバース図(色刷り外観図)を見ると、色彩感のある美しい家になっているのでとても嬉しくなりました。
打ち合わせを重ねてきた苦労が報われる思いがしました。
そこで 七月下旬にめでたく土地売買締結、建物請負契約、地鎮祭を立て続けに行いました。
八月から建設に着手します。ベタ基礎、骨組み、屋根瓦などの工事が思いのほか順調に進められ、八月下旬には早くも上棟式を迎えました。
この間幸運にも晴天が続き、セメント基礎や骨組みを雨に濡らさずにすみました。上棟式では大工さん達に祝儀金や弁当などを出して労ってお礼を述べ、屋根の上に登って四方の神様に挨拶しました。
しかし、施工開始後にも打ち合わせすべきことが山積していました。以下に二、三の例を紹介します。
音楽好きの私は家の中にオーデオルーム(音楽室)を設けることにしていました。大きな音を出しても隣近所に響かないように防音を施すわけです。
しかし本格的な防音工事には何百万円もの費用がかかるので、とても手が出ない。そこでサイディング、ペアガラス、グラスウール、石膏ボードなどの防音性能を調べ上げて、もっと安価な防音仕様を自分で考えました。
防音のことを何も知らない素人が考えた仕様だからあまりあてにはならないが、それを承知の上で敢えて施工してもらったのです。
そのうちに玄関構えが完成したが、期待したほどスマートな形ではなかった。
高橋社長としては住宅建築の常識に従って建てたはずだが、そんな事情がわからない私は装飾のために設えるのだから美観がなければ意味がない、とクレームを付けて修正を要請しました。
するとありがたいことに高橋社長が玄関構えの屋根瓦を取り替えてくれました。その後玄関構えの破風に私が言った通りの色が塗られたが、そのときの緑色がやたら派手なので頭が痛くなりました。
これも高橋社長の計らいで別な色に塗り直しをしてもらいました。
十二月に至り外構工事が始まります。家の敷地は道路面より30ないし40センチ高くなっています。
門構え、駐車場、ブロック塀を構想するときにはその落差の対処に苦慮していたが、鶴田工務長の助言のもとに自分で外構の絵を描いて渡しました。
フェンスも建材店に行って自分で探した物を使ってもらっていました。
掲載している写真はそうやって建てた手作りとも言える我が家です。家の特徴を以下に二、三紹介します。
自慢じゃないが、外壁と玄関構えと門構えの色彩がよく調和しているのをご覧下さい。レジデンスの標準仕様を正しく選ぶとこれだけの美観を持つ家が建つわけです。
念のため言いますと、標準仕様にすれば別売品よりも相当に安上がりとなります。
窓をご覧下さい。二階には対になった縦長窓を多く取り入れることになりました。これにより均整のある窓配置となり、しかも室内は明るく、機能と美観をともに備えた窓配置を実現しています。
家は長期優良住宅で、高断熱高気密仕様になっています。その性能を生かしてLDKに蓄熱暖房機を設置しました。蓄暖のおかげで高価な灯油を買わずに格安の夜間電力を利用してこの冬を暖かく過ごすことができました。
エアコンと違って蓄暖の暖かさは部屋全体に行き渡り、しかも空気がきれいで眠くなるほど気分が良いものです。
オーデオルームの防音仕様を自己流で提案したが、施工されたペアガラスの防音が足りないことを指摘して網入りペアガラスに換えてもらいました。
これにより大音量を出しても隣近所にはほとんどわからないほどの防音性能を実現しています。
打ち合わせを何度も行うのは相当にきつかったが、最後にはこんなに良い家が建って苦労が報われた気がします。この家は閑静でしかも交通至便という優れた住環境にあり、上に述べたように住み心地も申し分ありません。
それに外観の良い我が家に出入りするのも気分が良いものです。今は家建てに奮闘した日々を思い起こしつつガーデニングなどしながら早春のニューライフを満喫しているところです。